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サン・ラザール駅

『サン=ラザール駅』、風景画における浮き雲のような表現の白煙が確認できるが、それと同様なで筆触で描かれる駅舎の構造体や汽車のボディなどの工業的産物について、個人的にその対照性(コントラスト)に惹かれる。当時、産業革命や市民革命によって移ろいゆく社会を描写するのに、印象主義的な画法が親和性を発揮したというのはつまらない感想である。もうすこし考えてみよう。市民革命は封建制度を崩壊させ、啓蒙された市民を生み出したが、他方では、繰り返すが、諸革命によって目まぐるしく変容する社会で人びとは自分と結びつける他者が希薄になっていた。そこに何か、新たな「主客関係」をモネは提示していたように思う。そのような、「移ろいゆく社会を見つめる自分」という視点は、当時においては新たな主体であっただろう。刹那的な現象がカンヴァスに表れているのは了解したが、もう一段踏み込めば、カンヴァスにはそのような視点の導入がなされていたとも言える。